RW通行人

ペタ城に移住済み

【御三家】全部全部、君のせい

『そろそろ観念して貰っても良いですか?』
俺は一人が好きなんだ。
こう返したら相手は微妙に半笑するような表情になった。



コンビニ前のベンチ、一日中人に囲まれる収録日では唯一のオアシス。知ってるくせに邪魔して来る奴が居る。
「鶴崎くんは?」
「伊沢さん人と会いたくなさそうから僕ここで食べるーって先楽屋で言ってました。」
「ってお前は来るんかい。」

別に良いでしょ?隣に座ってる奴はイヤホンまで付けやがった。
意味もなく傍に来んな。そう思いながら目を閉じて、戦略とシミュレーションでいっぱいになった脳内をリフレッシュした。


「伊沢さん、水上お帰りー」
間抜けと限りなく近い明るい声が聞こえる。お帰りは何だよお帰りは。
「光ちゃんは?」
「先外に出ましたねー」
あっそ。
分厚い数学本を手にしながらニコニコする鶴崎が水上に唐揚げ取ってあるよーとか言ってるのを聞き流す。

ペラペラと紙を巡る音。
モグモグ咀嚼する音。
ごくごくと液体が飲まれる音。

楽屋が広いのに何で三人とも机の周りに座ってるのと理不尽な疑問が浮かぶ。近い。近すぎる。

呼吸の音がするし、心臓の音もする。
ゆっくりと、細かな。楽屋の四角い空間に充満してるような。

ドクンドクンドクン

「⋯うるさいな」「あっ、ごめんなさい!」
両手で口を隠す光ちゃんに一瞬疑問を感じる。光ちゃんいつ戻ったっけ。メイクさんも居るじゃん。どうやら二人が談笑してるらしい。
「はっ、いや違う、お二人の事じゃないんだ気にしないでください!ごめんごめん。」



『認めれば良いのに⋯』
何の事?
知らんふりしてみたらムッとされた。





「⋯俺は一人が好きなんだ。」
他に誰も居ない自宅で何となく口に出した。

イヤホンの音漏れが聞こえない。
横から紙の音がしない。
他人の食べる音も飲む音もしない。
自分以外の呼吸の音がしない。

ドクン
ドクン
ドクン

心臓の音も普通。
これで良い。


『本当は伊沢さんももっと一緒に居たいですよね?意地になる意図良く分からないですが⋯』
『結局伊沢さんが大変になるじゃないですか!』



人に影響されたくないんだ。
大きな喜びがあれば悲しみもきっと同等にあるから。
誰かの事で一喜一憂にされたくないんだ。

誰かの隣で安心する事は、一緒に居ない時は不安になる事だから。
隣に座ってくれると効率良く集中出来るのも、一人暮らしの家に帰った時に物足りなく感じる瞬間も、耳障りに感じるほど自分の心音も、



「全部、お前らのせいだ。」


评论
热度(2)

© RW通行人 | Powered by LOFTER